たたらのあらすじ・ネタバレ感想ブログ

漫画・ドラマ・小説のあらすじネタバレ感想

柚木麻子著『本屋さんのダイアナ』あらすじ・感想。小3で金髪だけど

柚木麻子著『本屋さんのダイアナ』あらすじ・ネタバレ感想。
小学生にして金髪その上ドキュンネームの女の子と、誰もが憧れる家庭に育ったお嬢様タイプの女の子が親友になって、『赤毛のアン』の世界さながら友情を育む…かと思いきや出会いがあれば別れもあり。
本書では、本好きさんにオススメの本もたくさん紹介されている。

 

本屋さんのダイアナ

The Story of Diana and her Books
■著者:柚木麻子
■出版社:株式会社新潮社

『本屋さんのダイアナ』登場人物

矢島大穴(やじま・だいあな)
 15歳になったら名前を変えたい
 将来は本屋さんを開きたい
 父親に会いたい
神崎彩子(かんざき・あやこ)
 本好き同士ダイアナと気が合う
 ダイアナと武田の仲を勘違いし絶交
 
矢島有香子(やじま・ゆかこ)
 16歳でダイアナを生み現在はキャバ嬢
 娘に「ティアラ」と呼ばせる
武田くん
 肉屋の息子
 ダイアナのことが好きだが伝わらない
沢渡みかげ(さわたり・みかげ)
 彩子と同じ名門中学へ進学するが……
 
彩子のパパ
 ダイアナの父の秘密を知っている
彩子のママ
 名前は貴子
 ダイアナに料理を教えてくれる
 
田所
 本屋[隣々堂]店長

亮太(りょうた)
 彩子の彼氏もどき
 
はっとりけいいち
 『秘密の森のダイアナ』の作者

『本屋さんのダイアナ』あらすじ

三年三組での新学期がスタートし、自己紹介の順番が回ってくる。
「矢島ダイアナです」
と名前を名乗ると、クラスのみんなが注目しひそひそクスクスが始まる。
 
 
キャバ嬢の母・ティアラ(と呼ばされている)が言うには、父親が競馬好きであった為、大穴と書いてダイアナと呼ばせる名前をつけたのだとか。
ダイアナは母の趣味でうんと小さい頃から金髪に染めている。
かなり目立った存在のダイアナに、案の定、休み時間になると味噌っ歯の女の子がつかつかとやって来て絡み始めた。
 

そこに助け船を出してくれたのが神崎彩子だった。
ダイアナは、彩子とはどうしても友達になりたいと思い、勇気を出して図書館へ誘う。
 
 
彩子は、小学1年生の頃から図書館でたくさん本を借りていたダイアナを知っていた。
そして、密かにその見た目に憧れていた。
全く正反対の2人だが、読書を通して唯一無二の親友になる。
 
 
だが、彩子が名門お嬢様中学を受験することになり、2人の時間が減っていく。
ある日、彩子はダイアナが武田君と2人でどこかから帰ってきたところに出くわす。
ふたりが自分に内緒でデートをしていたのではないかと勘違いした彩子は、「絶交」を宣言してしまう。

『本屋さんのダイアナ』ネタバレ感想

『赤毛のアン』を読んだことがあれば、アンとダイアナのような関係に憧れる女の子は多いと思う。
現実的には、愛だの恋だの絡むようになると女同士の友情はもの凄くもろい。
ダイアナと彩子も、武田君の存在が決定打を打った。
 
 
ダイアナの金髪と名前をからかっていた武田君は、『赤毛のアン』で言えばギルバートのポジションで、小学三年生の頃からずっとダイアナのことが好きなのだ。
ただ、残念すぎるほどその思いはダイアナに伝わらない。
実は『赤毛のアン』でも、アンはギルバートが病気で死にそうになるまで自分の気持ちに気づかない。
なんせ他の男と結婚する気まんまんだったしね。
 
 
ダイアナに絶好宣言をした後、エリート街道を進んでいた彩子。
だが、大学へ進学した頃から若干ビッチコースへ足を踏み入れる。
原因になった新歓コンパに彩子を誘った女友達には、
「いや~。彩子がまさかあんなシュガーになじむなんて思わなかった。だってさ、ヤリサーで有名じゃない」(298ページ)
と言われる。
これはもう惨め極まりない。
 
 
ヤリサーと知ってて友達を連れて行くようなヤツについて行くほど、お嬢様育ちの彩子は他人の悪意に疎かった。
自分の愚かさを認めたくないばかりに、彩子は周りの人間を見下すことでしか自分を保てなくなってしまった。
 
 
彩子のことをこりゃもうダメだな、と思ったのは、さんざん親に反発しておきながら父親のコネで就職しようとするところだ。
彩子の父親は冷静に娘を諭す。
---出版界の未来は明るくない。それでも、編集者を目指す学生は、難関を勝ち進むために早い段階から準備をし、勉強し、必死な気持ちで試験に臨んでいる。だから不況の今も狭き門なんだ。厳しいようだけど、これは彩子のためでもあるんだよ。コネを利用して内定を得たとして、苦しい思いをするのはきっと彩子だ。考えてもごらん?こんな時代に実力で内定を得るような同期と、これから一緒に働いていくのはとても辛いことだと思うよ。(310ページ)
 
彩子の大学生活はスッカスカのカッスカスで、恐ろしいほどの時間の無駄づかい、そして親のお金の食いつぶしで終わった。
父親の言う通り、勝ち残ってきた人達とは競うこともできまい。
 
 
そんな彩子と対照的に、見た目ヤンキーで高卒のダイアナは、カリスマ書店員として雑誌に取り上げられるほどになっていた。
彩子から見たらダイアナは負け犬人生を歩んでいるはずだった。
だが、ダイアナの本が好きだという気持ちは全くぶれない。
コツコツ地道に子供の頃から思い描いていた夢を少しずつ叶えていくダイアナは、とても応援したくなるキャラクターだ。
 
 
ダイアナと彩子は、再び打ち解けることはあるのだろうか?
彩子と武田君と一緒に、3人でダイアナのお父さん探しをした子供の頃のように。
やきもきしながらストーリーを集中して読んだ。
途中、様々な小説が紹介される。
高校生くらいだと『嵐が丘』『ジェーン・エア』なんて絶対読むよなぁ、と懐かしい気持ちになって、母校の図書館を思い出した。

 

ご訪問ありがとうございました